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「いい言葉は、いい人生をつくる」を読んで

この本は通称「モタさん」で知られ、医学博士で精神科医である斎藤茂太さんによる「生き方のヒント」が書かれた本です。
父は歌人として名を遺した斎藤茂吉。弟は作家で知られる北杜夫を家族に持ちます。
モタさんはこの本を晩年に書かれていますが、持論として「成功した人生か、そうでないかを分けるのは、振り返ってみた時”楽しかった”と即答できるかどうかだとおっしゃっていました。
90歳近くまで生きていると、大抵のことはどうでもよくなる。すさまじい時代を生きてきたが、「起こることを楽しんでしまえる力」それこそが人生を成功させる原動力なのだそうです。
この本にはそんなモタさんの言葉が多くのこされていますので、いくつかご紹介します。
【人生に失敗がないと、人生を失敗する】
精神科を訪れる患者さんで、「こんなことで?」と首を傾げてしまうことがあるそうです。「上司に、君の企画はこのままでは使えないと言われた。」
「女子社員に、ヘアスタイルがダサいと笑われた。」などと言うものです。
最近は、このように思うようにいかない事に耐える力、専門的に言えばフラストレーション・トレランスの急激な低下がみられていて、原因は家庭での我慢することを教えなくなってしまったからだと考えているそうです。
昔は欲しいものがあっても、正月になったらとか、成績が良かったらなど、兄弟が多ければ上の子のお古を使い新品を持たされなかった。我慢させる、辛抱させることがいかに大きな意味をもっているかを、昔の人は経験上、熟知していた。
しかし今では、欲しいものが何でも手に入り足らざる事をしらぬままに育った子供が、ちょっと気に染まないことがあれば簡単にキレてしまう。
モタさんの幼少期は、震災や戦争に見舞われ、山あり谷ありの波乱万丈だった。だからこそ「自分の人生は面白かった、と言える」だという。何一つ波風がなかったら、人生は味気ないものになってしまう。もし、あなたが今トラブルの渦中にあり、悩んでいるのだとしたら、トラブルは人生を発展させる為のチャンスと考えると良い。
【自分自身にこそ、「あばたもえくぼ」で接しなさい】
偏差値に始まり、ともすれば人をランクづけすることが多い世の中。広い世の中には優秀な人も多いから、こうしたランクづけで上位を占めるのは難しい。そうしたことから自己否定的になり、ついには鬱状態に落ち込んでしまった患者さんもいる。そういった患者さんには「もっと自分を愛しなさい。」と肩をポンとたたきたくなるそうです。
自分で自分を評価できなくて、どうやって長い人生を生きていけるのだろうか?自分は自分自身の最大の味方であり、最高の評価をする人でありたい。
熱帯雨林の樹木は、木に締まりがなく、木材としての評価は低い。それは気温が高く、多雨である熱帯は、植物にとって育ちやすい条件に恵まれている為です。
反対に陽光に恵まれず、厳しい寒さにさらされて育つ北国の樹木は木質が締まり、良質の木材になる。人間もそれと同じである
トラブルに遭遇したら、「これを乗り越えれば、自分は一段階スキルアップができる。人間的にも一段階ステップアップするチャンスなのだ。」と前向きに考えよう。常に前を向いていれば、前途のかすかな光明も大きくとらえれる事ができるものだ。
この本にはモタさん自身が経験し、学んだお話しがたくさん書かれています。
経験した方のお話しには、口先だけで言うものとは違い、説得力があります。多くのモタさんの言葉が書いてありますが、私の解釈として、「起こること全てを受け入れなさい」ということです。良いこと、そうでないこと、生きていたらたくさんあるけれど、まずは現状を受け入れること。現状を受け入れなくては、いつまでたっても問題は解決できません。
そして、人と同じ人生ではなく、自分だけの人生を送ることの大切さです。
人と同じ人生などつまらない。自分自身で考え、切り開いて成長していければと思います。これから5年後、10年後、時代は急速に変化していきます。それに対応し、生きていかなくてはいけません。しかし、この本に出合った言葉達がきっと背中を押してくれるに違いありません。
片岡